氷下待ち網漁の仕組みと漁師の暮らし(食育レポートVol.38)

氷に閉ざされた湖に穴を開けて漁を行う、風蓮湖の冬の風物詩「氷下待ち網漁」。
今回は、氷の下で魚を捕まえる仕組み、そして漁師さんの暮らしの一部をご紹介します。風蓮湖 氷下待ち網漁

 

【仕掛けの設置】

風蓮湖の氷下待ち網漁は、2種類の網を仕掛けます。ひとつめは手網(てあみ)。漁期が終わるまで設置しておきます。もうひとつが、漁のたびに引き上げる箱網(はこあみ)。1ヶ統(かとう・一つの漁場)に陸側と沖側、2つの網を仕掛けます。障害物にぶつかりそうになると方向を変える魚の性質を利用して、岸から沖に向かって手網を設置して、その両脇の箱網に入った魚を獲るのです。箱網は一度入ると戻れない仕組みになっています。
風蓮湖氷下待ち網漁 漁の仕組み

 

風蓮湖で使用する手網は1枚90m、箱網は約23m。なんと漁師さんの手編みです。「このくらいの小さい網なら、みんな自分で作るよ」そして、漁の命運を決める網の設計図は、家族にも見せない秘密とか。
風蓮湖 氷下待ち網漁

▲漁網を編む針「網結針(あみすきばり)」網が破れたらすぐに直せるようトラックに常備してある

 

【くじ場所と自由場所】

風蓮湖の氷下待ち網漁には、2種類の漁場があります。
ひとつはその名の通り、くじ引きで決める「くじ場所」、もうひとつは「自由場所」。
初日はくじ場所に網を入れてから、自由場所に網を入れます。一つの漁場が1ヶ統、初日から4日間かけて、合計8ヶ統まで網を仕掛けることができます。1ヶ統の設置にかかる時間は約1時間半~2時間。くじ場所に先に網を入れることで時間差を作り、漁場の場所取りを円滑に行っているのです。このような細かいルールは氷下待ち網漁のような”共同漁業権漁業”ならではのもので、各漁協でその地域に沿った規則を作っています。

 

【チカとワカサギの見分け方】

漁が終わると、番屋で魚の種類を選別します。ワカサギ、小チカ、中チカ、コマイ、ニシン、キュウリウオと分けていきます。ニシン以外はどれもキュウリウオ科で、見た目の違いは腹びれの位置など、ほんのわずか。けれども、ワカサギの価格はチカの約5倍。「ワカサギは紫の筋が入っていて、腹がぷくっとして柔らかい。触ればわかるよ」
風蓮湖 氷下待ち網漁

 

お父さんに選別を教わっていた太一さんは21歳。看護士を目指して北海道外へ進学し、今は帰省中です。今回の手伝いは自分から申し出たそう。
「最初の手伝いは、中学1年生のときの網入れでした。選別作業は3年ぶりで、すっかり忘れています。僕は別の道を選んだけれど、父はこうして僕を育ててくれました。父の姿は僕の糧になっています。」太一さんは少し照れながらそう話していました。
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【絶品!とれたての漁師飯(めし)】

選別の終わった魚は別海漁業協同組合新港市場へ出荷。このあと競りにかけられ、買受人が全国へ出荷します。
奥さんがとれたてのニシンを一尾とり、”刺身と数の子の塩炊き”を作って下さいました。コリコリとしたしっかりとした歯ごたえ。「ニシンは骨が多いけど、刺身にすると気にならないしょ」と話す奥さん。ニシンを生で食べられるのは、とれたてならでは。
ニシンの刺身

数の子の塩炊き

 

【育てる漁業】

中村さんが「風蓮湖ではニシンの稚魚を放流しているんだよ」と教えて下さいました。
現在風蓮湖では、ニシン・シジミ・ワカサギの人工種苗放流の取り組みを行っています。また、漁師さんたちは、氷下待ち網漁で網にニシンの卵がついていると、ふ化するまでそのままにしておくのだそうです。天然ニシンの生育が良い年は放流稚魚の生育も良く、資源増加の後押しになっているとの結果が出始めています。減少していた漁獲量は2011年から年々回復し、昨年(2014年)は600トンの水揚げがありました。

 

【38年間のノート】

中村さんは、その日の天候、気温、漁具合を、ノートに毎日記入しているのだそうです。
「漁をする場所は経験に基づいたカン。それに、好きな場所。必ず前の年のノートを見るね。漁はいい時と悪い時がある。漁師になった年から、ほんの数行だけど、何があったか記録しているんだ。そうすると前の年のことがわかる。亡くなった父に、高校の時教わったんだ。もう38年か。昔のノートは帯が破けてしまって、テープを貼って直してる。大事なものだ。」と話していました。
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▲「どこの(港の)漁師も、自分のとこの魚が一番と思っているだろうね。もちろん、ここ(風蓮湖)が一番だよ。」と笑う中村さん

 

中村さんは月曜~土曜に漁を行い、日曜日も雪が積もれば除雪、氷が厚くなれば穴開け、と漁場管理を続けながら氷が溶けるまで氷下待ち網漁を行います。
そして風蓮湖の氷が溶ける頃、流氷によって豊かな栄養を蓄えたオホーツク海へ出て、ホッキ・ホタテ、そして秋にはサケ漁(西別鮭)と、年間通して様々な漁を行っています。

《農林水産省フードチェーン食育活動推進事業》