北に寄る貝~ホッキ貝の噴流式桁網漁(食育レポートVol.42)

【ホッキ漁獲量日本一!北海道】

 

北海道はホッキ漁獲量が日本一。別海町は苫小牧市に次いで、全国第2位の漁獲量です。
ホッキ貝は正式和名を”ウバガイ”といい、関東より北の浅い砂地に生息しています。北海道では南部の日本海側を除き、ほぼ全域で水揚げされており、殻が黒く、厚くて重さがあるものが高く取り引きされています。
黒ホッキ

 ▲ホッキ貝(黒ホッキ)

 

資源を守り、他の漁との調整をはかるため、別海漁業協同組合(以下 別海漁協)では例年12月1日~12月31日と3月1日~5月31日、野付漁業協同組合は12月1日~12月26日と1月6日(2015年より)~5月31日と設定しています(日曜・悪天候時を除く。その他にも休漁期間があります)。

 

朝6時。日の出とともに、別海漁港からホッキ漁船が出港しました。別海漁協で行うホッキ漁は3トン未満の小型船で、別海漁港と走古丹漁港から合わせて20隻、47名の組合員が操業します。一隻には2~3人の組合員が乗船して共同で漁業を行います。
別海町 ホッキ漁

 

別海漁港から第八祥鵬丸(しょうほうまる)で出港したのは、船長の中村清一(なかむら きよかず)さんと、共同漁業者の永野泰弘(ながの やすひろ)さん、そして別海漁協青年部長の道又隆史(みちまた たかふみ)さんの3名です。

※別海町の漁業協同組合青年部の取り組みはこちら
子どもたちに生産者の顔を~漁協青年部の出前授業~(食育レポートVol.25)
 

 

 

ホッキは水深6mほどの比較的浅い海の砂の中にいます。別海漁協の漁場は、風蓮湖に沿って黒ホッキ漁場、茶ホッキ漁場、造成区、未利用区の4区域があり、時期によって漁場を変更します。
別海漁業協同組合 ホッキ漁場

 

この日、船団は別海漁港から15分ほどの黒ホッキ漁場へ向かいました。岸にはシカがたくさん見られました。この日の気温はマイナス3度、風速は2m。中村さんは「今日は凪(な)いでる(穏やか)。風が強い日はとても寒いんだ」と話していました。
走古丹 シカ

 

中村さんは無線で船団の仲間に伝えました。「俺、ここにするわ」
そして6時半頃、無線から船団長が漁の開始を伝えます。「これから漁を始めます。今日のノルマ(許容漁獲量)は一人100kg。」漁協全体で一日に設定したノルマは5トン、この第八祥鵬丸は3人の組合員で300kgを目指します。
別海漁業協同組合 中村さん

 ▲「若いころは、漁の初日は緊張して眠れなかったな。今も氷下待ち網漁や鮭定置網漁の網を下ろすときは気が引き締まる」と話す中村さん

 

 

【貝のキズを防ぐ「噴流式桁網漁(ふんりゅうしきけたあみりょう」】

 

船尾から浮き球のついたアンカー(錨・いかり)を海中に投入します。ここが今日の漁場の中心になります。ここから150m先でマンガン(桁網)を下ろし、25分かけてマンガンを引きながらこのアンカーに戻る、という作業を数回繰り返します。これで、海底でマンガンを引きながら選別作業をすることができます。
別海漁業協同組合 ホッキ漁

ホッキ漁

 ▲アンカーと赤い浮き球

 

アンカーについたワイヤーを伸ばしながら船を進めたら、「噴射式マンガン」という漁具を海中に投入します。噴射式マンガンは高圧ポンプで汲み上げた高圧の海水を赤いノズルから噴き出し、海底の砂を巻き上げます。そして奥にある爪でホッキを掘り起こし、袋網へ取り込む仕組みです。 このような漁法を「噴流式桁網漁」と言います。
噴射式マンガン

噴射式マンガンの仕組み

 ▲噴射式マンガン(天地が逆の状態)    ▲水流で砂を巻き上げ、爪でマンガンへ取り込む

 

アンカーへ近づくと、操船している中村さんがスクリューを動かし、永野さんと道又さんは、噴射式マンガンに付いているワイヤーをクレーンの力を借りながらマンガンを起こしました。
別海漁業協同組合 ホッキ漁

別海漁業協同組合 ホッキ漁

別海漁業協同組合 ホッキ漁

 
水揚げの様子(動画16秒)

 別海漁業協同組合 ホッキ漁

 

 

【漁と同時進行の選別作業】

 

噴射式マンガンを海に戻し、2度目の漁をしている間に選別作業を行います。
「北海道海面漁業調整規則」で、殻長7.5センチメートル以下のホッキの漁獲は禁止されています。さらに、別海漁協では8年ほど成長した9.3cm以上を漁獲すると決めており、水揚げしたその場で9.3cm~10.5㎝未満を「大」、それ以上を「特大」と分け、それ以下のものはその場で海に戻しています。
ホッキ漁 サイズ選別

 

マンガンには、ホッキ以外の貝も入っていました。サラガイ(シロガイ)、オオミゾガイ、バカガイ(アオヤギ)。種類ごとに分けて出荷します。量が少ないので、市場では他の漁船のものと合わせて競りにかけます。kai

サラガイ(シロガイ)、オオミゾガイ、バカガイ(アオヤギ)


 

 

【船上のまかない】

 

最初の選別を終え、中村さんがむいたホッキを道又さんが炭火で焼きはじめました。道又さんはホッキが大好物なのだそうです。
ホッキ貝


 

 

火を通すと「足」と言われる部分が赤くなるホッキ。
味付けは海水の塩分のみ。外はわずかに歯ごたえがあり、中はジューシー。火を通すと甘みが増します。「海で食べるのは違うしょ。買っても食べられない味だ。」と話す中村さん。
ホッキは刺身、バター焼き、カレーライス、ホッキご飯と、いろいろな料理が楽しめます。
ホッキ

 

 この日4回マンガンを引き揚げ、ノルマの7カゴ(約300kg)を漁獲した第八祥鵬丸は、8時半頃漁を終え、帰途につきました。
別海漁業協同組合 ホッキ漁

 

 

【海から上がってきた昔の漁具】

 

船の舳先には、錆びついたおもりが置いてありました。中村さんによると、昔の定置網の重りに使われていたもののようです。「マンガン(桁網)に入ってきたんだ。珍しいから置いてるんだ。」
別海町郷土資料館によると、これは「漁網錘」(ぎょもうすい)と呼ばれ、野付通行屋跡遺跡でも出土している近世のものだそうです。
ホッキ漁 

 

 

【出荷、そして再び海へ】

漁港へ接岸すると、中村さんの息子、太一さんが岸壁に待機していました。太一さんと4名でホッキをトラックに乗せ、港にある市場へ出荷しました。
別海漁業協同組合 ホッキ漁

別海漁港 市場

 

中村さんと永野さん、そして太一さんは岸壁に戻って漁船を乗り換え、数日前に前浜へ網を入れ始めたばかりのカレイ底建網(そこたてあみ)漁へ向かいました。また、風蓮湖では氷下待ち網漁の氷が溶けると、船で操業する待ち網漁が4月下旬まで行われます。中村さんのように一日に複数の漁を行う漁業者もいれば、ホッキと鮭定置網のみ操業している漁業者、ホタテ漁で尾岱沼漁港に水揚げする漁業者と、同じ漁協に所属する漁業者でもさまざまです。
別海漁業協同組合

 

この日水揚げされたホッキは、東北を中心に北海道内・関東地方へ出荷されていきました。別海漁業協同組合 新港市場

別海漁業協同組合 ホッキのセリ

 

《農林水産省フードチェーン食育活動推進事業》